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 月 桂 樹 〜 豊かな水と神話に彩られる樹

 月桂樹(学名 :Laurus nobilis)は、クスノキ科の常緑樹、雌雄異株です。木の高さはおよそ5〜10メートル程。原産地は地中海沿岸と言われています。トルコの南部アンタキヤ周辺には月桂樹が多く、特に、ハルビエ村周辺では、野生の樹木の殆どが月桂樹と行ってよいほど、多くの野生の月桂樹の木が群生しています。

 ハルビエは、古代から水が豊かで冬は温暖で夏は涼しいため、ローマ時代の貴族達の別荘地となった場所でした。当時の地名は「ダフネ」。これは、ギリシア・ローマ神話の太陽神アポロンの求愛を拒み、月桂樹の木に変身した美しい少女ダフネに由来する名です。
 そのため、トルコの人々は、アンタキヤのハルビエ(ダフネ)村こそ月桂樹が生まれた場所だと信じて疑いません 。

 月桂樹は、木の葉の芳香と薬効が古くから知られ、スパイスや薬として用いられたほか、ダフネの物語からアポロンの樹として神聖視され、勝利と栄光の象徴として、「才知への報酬」という意味が込められて月桂冠が芸術家や栄誉のあった人々たちの頭を飾ってきました。また、デルフォイの巫女達も、月桂樹の清浄さと香り高さを神の言葉を受けるインスピレーションを生み出すために用いました。これは、古代の物語ですが、ハルビエ周辺では、今も特別な使い方が生きています。月桂樹の実を収穫し、それを煮て、果肉からしみ出したオイルを集め、スキンケアや筋肉痛やリューマチを癒すマッサージ用のオイル、石鹸として用いる方法です。
 深い緑が美しく、グリーンとスパイスの爽やかな香りがするオイルは、髪をつややかに整え、肌につけると涼感の芳香が心を落ち着け、引き締め、清らかに健やかに保つとして大切にされてきました。花言葉は「栄誉と勝利」「幸運と誇り」。


 かつてローマ貴族達の邸宅の床や壁を、繊細で優雅なモザイクが飾っていました。単調な石の館を、好ましい自然の風景や美味しそうな果物、ロマンティックな神話の物語を絵にしたモザイクで飾っていたのです。今ではそれは、考古学者達の手で発掘され、アンタキヤ市内やイスタンブールのモザイク博物館に飾られていますが、この中にも月桂樹やダフネ、アポロンがしばしば登場します。そこからもハルビエには非常に古くから月桂樹があたりを覆い、人々に心地よさをもたらしていたことが伝わってきます。

 今は、ハルビエ周辺も、人口が増え宅地化が進み、また、手間のかかる月桂樹オイルづくりをおこなわない人たちも増え、月桂樹の群生は縮小傾向にあります。
 しかしその中でも、ハルビエのダフネの物語とオイル作りの伝統と大切にし、樹を守りながら、より良いオイルを作ろうとしている生産者もいます。私達ナイアードは、毎年、ハルビエを訪問し、こうしたオイル生産者から直接オイルを買い付け、月桂樹の森とオイル作りや地域の文化が保たれることを支援しています。

【 写真 上から 】 
◎ダフネ(月桂樹)オイルの生産者の男性:
 男性とダフネ(月桂樹)の花、右は月桂樹の実。
月桂樹の花は初冬、ダフネ(月桂樹)オイル作りの少し後に咲きます。それは、月桂樹の実を収穫してからひと月ほどしか経っていないということです。月桂樹の生命力の強さを感じさせるサイクルです。

◎月桂樹の樹:
 ハルビエ(ダフネ)村の月桂樹の樹は野生です。森や野原はもちろん、畑の中にもオリーブやオレンジの木と一緒に生えています。スパイスや薬、オイルの原料となる月桂樹の樹は村人によって大切にされてきましたが、近年の宅地化の影響で、伐採される事も増え、月桂樹の群生域の縮小が懸念されています。
 私達ナイアードが生産者から直接ダフネ(月桂樹)オイルを買い付けることで、地域の人々の中に、ダフネの伝統を再発見する切っ掛けが生まれればと考えています。

◎月桂樹の雄花:
 ダフネ(月桂樹)は、雌雄異株、つまり、男の樹と女の樹があり、それぞれが微妙に異なる花をつけます。こちらは雄花。蕊が多く華やかな花。

◎月桂樹の雌花:
 こちらは雌花。めしべを中心にした清楚な花を咲かせます。いずれも大きさは直径7ミリほど。花弁はきめが細かく肉厚。金木犀ににた、優しく甘い芳香があります。

◎アンタキヤ市内モザイクミュージアムにあるローマ時代のモザイク画2枚:
 ハルビエは湧水群によって滝や緑、優雅に蛇行して流れるオロンテス河など美しい景観と心地よい気候にが古代から人々に避暑地として愛されてきた美しい場所。ローマ時代、貴族たちは、こぞってここに別荘を構えました。これらの別荘は、必ず美しいモザイク画で飾られました。
 モザイクのモチーフは、ダフネやアポロンなどの優美な神話の登場人物たちや海の風景、いかにも美味しそうな果物や食物など。色とりどりの小さな石を構成して描かれ、今でもその繊細な美しさがそのまま保たれています。
 アンタキヤのモザイクミュージアムに展示されているモザイクの殆どがハルビエ村、つまりかつてのダフネ村から出土したものでもあります。



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