ムゴナは、アトラス山脈南面を走る、カスバ街道のほぼ中間点に位置する街です。
豊かな水と一年を通じて、乾燥し涼しい気候から、古くからバラの産地として知られた場所でもあります。
 カスバ街道は、モロッコなど北アフリカ一帯の先住民族である、ベルベルの村が点在する、モロッコの伝統が

今も生きる地域です。谷ぞいの土で作った伝統的な家の集落と緑濃い畑の、素朴で自然と調和した美しい光景が
見られます。バラも、彼等によって栽培される伝統的な植物です。
(上写真:伝統的な模様のレリーフが施されたベルベルの土の家。)



(写真:ムゴナ周辺の風景。カスバとバラ、畑)
ベルベル(自由人、高貴な人の意味)は、モロッコの先住民族です。アラビア語とは別の独自の言葉、文化を持ち、それがモロッコ独特の穏やかで素朴な雰囲気を生み出す源となっています。

 今も、モロッコの人口のおよそ3割はベルベルの人々で、山岳地帯や谷の川沿いに土の家の集落を作って今も多くの人々が伝統的な暮らしを続けてます。多くのモロッコ人がベルベルの話をする時、自分達の血にベルベルの血が流れる事に誇りを持ち、その暮らしや歴史に憧れを込めて語ります。

 ベルベルの村では、居住エリアと畑のエリアを分けられます。川に近い低い場所に畑をつくり、それを囲むように小高い丘や谷の斜面に居住地域を設けます。村の一番高い場所に公共の井戸が掘られ、そこから、供給される水が、畑から川まで水路を縦横に走り、人々の生活と畑の作物の命を支えます。
(上写真:休耕中の畑。豆科の家畜の飼料になる植物が植えられています。樹木は、オリーブ、いちじく。)
ここでは、緑は、人が守り支えてこそ得られる貴重なものです。
 (写真:左:村から畑の遠景、緑は畑の区域。村のない場所に緑はほとんどありません。右:畑の中の水路。水路の周りには、バラの他、柳や白樺、ザクロ、アーモンドなどの木が生えています。)

強い日ざしの暑い、乾いた茶色の村を通り抜け、畑の区域へ足を踏み入れると、あたりはとたんに緑に溢れ、空気はすっと涼しく、まるで高原か豊かな緑の谷のような光景に一変します。
樹木や湿った土によってうまれる冷たい空気と、居住地域の乾いた空気によって微気象が生じ、畑にはいつも涼しい風が吹いています。

畑には、様々な作物や果樹が混在し、人の食物の他、牛の飼料用の豆科の植物を転作し、地力を高め、肥料として、どこの家でも必ず飼われているヒツジや牛の糞が利用されています。つまり、パーマカルチャーに近い農業が伝統的に行われているのです。
 こうした緑豊かな畑の周縁にバラは植えられますが、あくまで他の作物を守るものなので、特別な手入れはされず、自然のままに育ちます。
 現在では、畑によっては、残念ながら化学肥料を用いる場合もありますが、私たちがバラを買い取る契約農家では、農薬はもちろん、化学肥料を使わず、ベルベルの伝統的な有機農法を追求します。

 ムゴナのバラの特徴は、バラだけを栽培する専用の畑が無い事です。
麦等の食と現金収入を支える作物を害獣等から守るため、畑と畑の境界を示すために植えられた、いわば農業の副産物であり、村びと自身にも、香りや薬草として大切に楽しまれている点です。(左上写真:村の畑の入り口。小道ぞいにバラが植えられています。バラの脇は麦畑。)
 かつて、ある大きな海外の企業が、バラを安く買おうと強硬な圧力を村にかけた事がありました。
 村人達は、それに屈せず抗議の印として、バラを株だけ残して刈り取ってしまったことさえありました。バラは現金収入をもたらしますが、村びとにとって、バラは、それ以上に豊かな実りの畑の喜びと、ベルベルの人々の結束と誇りを象徴する存在なのです。



 地中海と大西洋に面した北アフリカの国、モロッコは、サハラからの暑く乾いた風、海からの風がもたらす優しい雨と霧、アトラス山脈の雪解け水と、さまざまな気象がもたらす恵みのおかげで、自然素材の宝庫です。
その中でも素晴らしいものの一つが、ムゴナのバラ「ダマスカス・ローズ」。厳しくも豊かな自然に磨かれた、エネルギーに満ちたダマスカス・ローズの深みのある甘さと軽やかな花の香りとその働きは、古くから世界各地の人々の憧れでした。

 ムゴナのバラが咲き始めるのは、アトラス山脈からの雪解け水がカスバ街道の村々を潤しはじめる4月の中旬から。収穫の期間は短く、ほぼ20日から40日間で、年によって大きく異なります。この期間だけでも、その貴重さがお分かりいただけるでしょう。

 
バラの収穫は、早朝の涼しい時間だけに限られます。
太陽が高く登り、気温が上がると、バラの香りはどんどん揮発して薄くなってしまうためです。
香り高いままの花を収穫するため、一家総出でバラを摘みます。
バラは、完全に開き切る寸前の物がもっとも香り高く、収穫はこの時期のものを選んで摘み取ります。
(上写真:ばらをとる人、左写真:早朝のムゴナのばら、右下:早朝、ばらをとる人たち)

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