モロッコだけで採れる粘土、ガスール。古くから石鹸のように使われ、モロッコの女性達の美を支えてきました。
モロッコの女性達にガスールについて尋ねると、さまざまにレシピを工夫して肌や髪に磨きをかける、女性ならではの楽しいひとときや、家族のために原石から自家製ガスールを手作りするお母さんの愛情といった、温かく、大切な時間や記憶に結びついているように感じます。
モロッコでは特に洗髪に利用されてきたというガスール。モロッコの水は硬水で石鹸の洗浄力が落ちてしまうため、吸着力で汚れを落とすガスールを使うことは本当に理にかなっています。
昔は、週に1度ハマム(蒸し風呂。日本の公衆浴場のようなもの)に行くのが、女性達の楽しみだったと言います。
ハマムに行く日は朝早くに家の仕事を終え、ガスールや石鹸、垢すり、手桶はもちろん、お菓子やお茶、果てはくつろぐための椅子まで用意して出かけたそうです。女性達がおしゃべりをしながら思い思いに自分の肌や髪を磨く、社交場でありエステサロンでもあるようなハマム。ここでもガスールは欠かせない存在です。
ハーブを混ぜ込んだ自家製ガスールや、ばら水でガスールを溶いて作るスペシャルパック、ガスールとヘナのヘアパック等、母から娘に受け継がれたり、そこにさらに工夫を加えたりしながら、女性たちは自分なりのレシピを編み出してきたのです。
大きなスーパーマーケットができ、シャンプーやボディーソープ等の選択肢も広がった現在、モロッコにおいても、改めてガスールの魅力が見直されています。
自然素材ならではの優しい使い心地や気持ちよさ、すべすべとなめらかな肌の仕上がり、そしてさまざまにアレンジして使う楽しさ。いつになっても古くなることのない「価値」がガスールにはあると感じます。