朝摘みばら水~2012年製造レポート~

遅い春、花を待ちわびた2012年

アトラス山脈の雪

薔薇が咲くシーズンである4月~5月はモロッコの雨季にあたります。しかし、今年は特に雨が少ない年でした。「その影響で開花が遅れている」と 3月下旬に私たちの許にムゴナから連絡がありました。


また、例年であればそろそろ蕾が色づく4月上旬にアトラス山脈に雪が降り、それが薔薇の開花を一層遅らせることとなった今年。昨年に続き遅い春を待ちわびる年となりました。

若い蕾

4月中旬にはマラケシュからムゴナに移動し、蒸留の準備を整え、後は薔薇の到着を待つだけの私たちでしたが、蒸留器をフル稼働できたのは5月に入ってからでした。


本当に薔薇は咲くのだろうか、予定している生産量を満たすことができるのだろうかという私たちの不安をよそに、ムゴナの人たちは「薔薇は咲く。心配するな。」といった調子。しかし、その言葉の通り、4月末には固かった蕾も膨らみ、地域の人たちの言葉通り、薔薇は次々に美しい花を咲かせていきました。


今年は雨が少ないと知っていた地域の人たちは、少ない雨でも灌漑の水を調整し、良い薔薇を育てようと努力しました。雨が少ないと薔薇の収量も少なくなると言われますが、その努力の甲斐あって今年も何トンもの薔薇を収穫することができました。そのような気候の中咲いた薔薇は、雨が少なかった影響で、1輪1輪の花弁に力強さがあり、フレッシュではありながら蜂蜜の濃厚さを感じさせる香りの薔薇でした。

摘みたての薔薇の香りを届けたい~使い手と作り手が繋がる~

夕暮れのムゴナ工房

賃貸のアパルトマンから製造拠点を移し、自社工房で2年目の製造を行った今年。
昨年よりスタッフを2つのチームに分け、それぞれのチームにリーダーを置き、2名のリーダーを中心にした製造の形を始めました。


今年の1月、ナイアード・モロッコから、マネージャーのRachid(ラシッド)、製造リーダーのHafid(ハフェド)、Hicham(ヒシャム)の3名が研修の為日本を訪れました。 滞在中は、日本に届いた製品の最終検品と出荷に立ち会い、東京、大阪のお店を営業スタッフと一緒に回り、お店のスタッフ向けの勉強会で製品の説明を行いました。 この経験で、自分達が作る製品がどんな過程を経てどのように使い手に繋がっているのか、どのような方々が、自分達が作った製品を使ってくださっているのか実感できたと話してくれました。


例年はムゴナに到着すると、短い薔薇の開花シーズンに追われるように、張りつめた緊張感の中ですぐに製造が始まるのですが、今年も昨年と同様、薔薇の開花が遅れた為、製造開始まで思わぬ時間が生まれました。その時間の中で、薔薇の選別の注意点を皆で確認することにしました。
使い手との距離が縮まった今年、日本を訪れた3名が、摘みたての薔薇の香りをそのままお客さんに届けたいという想いを口にし、その想いが製造に加わるスタッフたちにも伝わり、工房に届けられる薔薇の選別作業もより一層丁寧に行われました。


日本を訪問し、お店の方々や、製品を使ってくださる人達と直接お会いできたことをきっかけに、これまでの経験の中で学んだ、1輪1輪の花の状態を確認し、香りのよい花だけを根気強くゆっくり蒸留することが大きく香りに影響するということを、それぞれのスタッフがより意識しながら製造に取り組んだ年となりました。

更なる繋がりを活かして・・・

薔薇の選別

朝摘みばら水の製造では年に1度、薔薇が咲くシーズンに1年分の蒸留を行います。 連続性がないようにも思えますが、蒸留したばら水には、ボトリングされ日本に届いた製品が、お店を通じて使い手に届くという連続性が、また、作り手である私たちにとっては、今年の経験からより良い製造の形を模索し、来年に繋げていくという連続性があります。


今年もまた、新しいスタッフが製造に加わりました。製造経験の長いスタッフが、新しいスタッフに留意点や、何が大切なのかを教え、製造が終わる頃には、新しいスタッフもチームワークになじんでいきました。蒸留でできたばら水は、マラケシュの工房に運ばれ、そこでボトリングされます。 ボトリングには蒸留の経験のないスタッフも携わっているのですが、今年から蒸留に携わったスタッフは、ムゴナで蒸留を経験したことで、これまで行ってきたマラケシュでの作業との繋がりを実感できたようでした。

2012年の薔薇

使い手と作り手が繋がり、製造に携わるスタッフ各々が製造の作業の繋がりにも目を向けながら、より繊細なものづくりに取り組んだ2012年のばら水は、薔薇の印象そのものを残した、グリーンが香り、その後に、蜂蜜の甘さの中にほのかに柑橘を感じるフレッシュな香り。 年毎の微妙な変化と、時とともに深みを増していく香りの移り変わり、一期一会の香りをお楽しみください。

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